オフィス回帰が始まった?企業の15%が「在宅勤務」とりやめたワケ

コロナ禍で在宅勤務やリモートワークが一気に普及しました。ここにきて「オフィス回帰」の現象が明らかになっています。その理由を探ります。


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コロナ禍で在宅勤務やリモートワークが一気に普及しました。働き方改革の中で制度だけは用意されていたリモートワークですが、実際の利用者は普及には至りませんでした。2020年春からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、緊急避難的な対応として導入が進み、大企業を中心にある程度普及しましたが、ここにきて「オフィス回帰」の現象が明らかになています。その理由を探ります。

テレワークをしている企業は半減した

新型コロナの蔓延で2020年以降テレワークが急増しオフィス無用論が叫ばれている。しかし本当にオフィスは不要なのか。その実態に迫った。

コロナ禍以前の日本の企業はオフィスを構え、そこに労働力を集約して仕事をするという事が当然のこととして行われてきた。

そして日本経済の中心である東京都心は長い間、その人気が衰えることはなかった。

三鬼商事の「オフィスマーケット」データによると、都内のオフィスビルの空室率は12年6月の9.43%から下がり続け、20年2月には1.49%になった。

ところが4月7日から5月25日まで行われた第一回緊急事態宣言などで行動抑制が求められ、都内にある多くの企業が在宅勤務をするようになったことで経営者たちの意識が変わっていったという。

「多くの社員がテレワークをすれば、オフィスは閑散とした状態になるわけです。しかしそれでも賃料は発生する。一方で社員からは当初、『会社に行かなくて済むから通勤ラッシュにも巻き込まれることもなくて快適だ』とテレワークを称賛する声が上がっていた。『だったらオフィスなんていらないのではないか』といってオフィスの契約を解約する経営者もかなりいたようです。ただしばらくすると、そんな経営者たちも再びオフィスが必要だといって戻ってきています」(ベンチャー企業経営者)

実はテレワークを実施することが必ずしも仕事の効率を上げることにはつながらないと実施する企業が減ってきていることがさまざまな調査で浮き彫りになってきている。

22年7月4日から5日にかけて20歳以上の企業や団体に雇用されている1100人にアンケート調査を行った公益財団法人日本生産性本部の「第10回 働く人の意識に関する調査」では、20年5月には「テレワークを行っている」と31.5%の人が答えていたのが、22年7月の調査では16.2%まで減少しているというのである。

東京都の調査(都内の従業員30人以上の企業が対象)でも20年3月には62.7%の企業で行われていたテレワークが22年7月には52.3%まで減少しているという。

「自宅での勤務に満足」は75%だが

ではなぜこのようなことが起こっているのだろうか。

そこで日本生産性本部のデータを詳しく見ていくことにしよう。テレワークの実施状況を従業員規模別に見ていくと、100人以下の会社の場合は20年5月には22.5%だったのが22年7月には10.4%、101~1000人までに会社では33.0%から17.6%、1001人以上の企業の場合は50.0%あったのが、27.9%と大幅に減少しており、いずれの規模の会社でも22年7月は過去最低の実施率を記録している。

「これまで、テレワーク実施率は中・大企業が牽引してきた。しかし、今回、いずれの規模においてもテレワークの退潮が明らかである」(「第10回 働く人の意識に関する調査」 より)

テレワークの実施率を年代別で見てみても20代は34.3%から12.0%、30代は27.2%から15.5%、40代以上は32.0%から17.4%となり、「20代の実施率は全調査回・前年代を通じて最低水準、30代はそれに次ぐ低さとなっている」(同)という。

週当たりの出勤日数で見ていくと、22年7月は0日が16.9%、1~2日が32.6%、3~4日が30.3%、5日以上が20.2%となっている。

ではテレワークの大多数を占める自宅勤務についての質問で、「自宅での勤務で効率が上がったか」という問いに対しては「効率が上がった」が18.2%、「やや上がった」が43.9%。逆に「やや下がった」が29.1%、「効率が下がった」が8.8%と半数以上が「効率が上がった」「やや上がった」と答えている。

「自宅での勤務に満足しているか」という問いに対しては「満足している」が29.7%、「どちらかといえば満足している」が45.3%、「どちらかと言えば満足していない」が20.9%、「満足していない」が4.1%でやはり満足していると考えている割合の方が高い。

ではなぜ実施率が減少しているのか。そこでテレワークを実際に行っている人たちの課題についてみてみることにしよう。

アンケートによると、当初上位を占めていた「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」は20年5月の43.9%から22年7月は29.8%、「Wi-Fiなど、通信環境の整備」は45.1%から33.1%、「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」は48.8%から30.3%、「営業・取引先との連絡・意思疎通をネットでできるような環境整備」が20.5%から12.9%、「上司・同僚との連絡・意思疎通を適切に行えるような制度・仕組み」が28.0%から20.8%といずれも減少している。

「第1回調査から上位に挙がっていた『部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備』『Wi-Fiなど、通信環境の整備』などの自宅の環境整備に係る項目は、回ごとのばらつきはあるが、徐々に減少を続けており、今回調査でも『課題』とする割合が過去最少となった。特に『部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備』は初めて3割を下回った」(同)

 

再認識されたコミュニケーションの重要性

しかし、その一方で「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」は22年4月の前回調査の27.3%から3ポイント、「営業・取引先との連絡・意思疎通をネットでできるような環境整備」は9.5%から3.4ポイント、「上司・同僚との連絡・意思疎通を適切に行えるような仕組み」は18.6%から2.2ポイント上昇、「オーバーワーク(働き過ぎ)を回避する制度や仕組み」についても20年5月の調査から「15.0%前後を推移し続けている」(同)ことから、長引くコロナ禍の中で物理的な問題から健康面やメンタルな問題がより重要な課題として浮上してきていることが浮き彫りになってきた。

さらに労務管理上の問題でも22年7月の調査では「仕事の成果が評価されるか不安」(26.4%)、「仕事振りが評価されるか不安」(18.0%)、「オフィス勤務者との評価の公平性」(17.4%)などの人事評価に関する課題が上位にあがっている。

このほかにも「業務報告がわずらわしい」(15.2%)、「上司・先輩から指導を受けられない」(14.0%)、「孤独感や疎外感」(12.9%)、「勤務時間管理が働き方にそぐわない」(11.8%)、「健康管理や勤務中の事故が心配」(11.2%)といった声も上がっている。

むしろテレワークの環境は人によって違う。全員の生産性があがるわけではない、という声も聞こえてくる。考えてみれば日本の住宅事情が非常に厳しく、個室を持たない人も多い。小さな子どもが遊んでいる中で仕事に集中するというのはなかなか難しい。

コロナ禍による長期間のテレワークでリアルなコミュニケーションの重要性を再認識した人も少なくない。このような中で仕事の場としてのオフィスからコミュニケーションの場としてのオフィスという新しい機能が注目されるようになり、オフィス回帰が進んでいるようだ。

さらに都内のオフィス賃料も20年7月の2万3014円をピークに22年7月には2万262円と2752円下落している。これが経営者の背中を押しオフィス回帰に向かう大きな要因にもなっている。

果して今後オフィスはどうなっていくのか、注目したい。