大手企業で削減の動き…もう「オフィス」は不要なのか?

目次1 コロナ対策、働き方改革…テレワークへの期待2 オフィス削減…それでも徐々に通勤客は増加 コロナ禍、多くの企業でテ … 続きを読む 大手企業で削減の動き…もう「オフィス」は不要なのか?


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コロナ禍、多くの企業でテレワークを実施し、感染が落ち着いてきたなかでも在宅勤務を行う会社員は大勢います。そのような状況下、大手企業を中心にオフィス解約のニュースが多く聞かれ、もはやオフィスは不要という声も。このままオフィス削減の動きは加速していくのでしょうか。みていきましょう。

コロナ対策、働き方改革…テレワークへの期待

新型コロナウイルス感染症の広がりによる行動制限で、一気に普及した「テレワーク」。そもそもテレワークとは、情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語です。

自宅を主業場所とする「在宅勤務」のほか、電車や飛行機、移動の合間に喫茶店などで行う「モバイルワーク」、サテライトオフィスやコワーキングスペースで行う「施設利用型テレワーク」、リゾートなどで行う「ワーケーション」を含めて、テレワークと称しています。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応として語られることの多いテレワークですが、そもそも「従業員の育児や介護による離職を防ぐことができる」「遠隔地の優秀な人材を雇用することができる」「災害時に事業が継続できる」など、さまざまなメリットをもたらすものとして注目され、働き方改革を推し進める施策のひとつとして位置づけられていました。

また日本を再び成長曲線の軌道に乗せるべく、労働生産性を向上させる施策として、2020年7月に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」でも、テレワークの推進は言及されています。

働き方改革、生産性向上など、さまざまな思惑が一致して推進されているテレワーク。新型コロナウイルス感染症の流行とも重なり、感染症拡大への対応として、多くの企業が実施することになったのです。

テレワークの実施率に関してはさまざまな調査があり、それによって数値が異なるので、なかなか実態を把握するのは難しいところではありますが、総務省『通信利用動向調査(企業編)』*によると、2020年、テレワークの導入企業は47.4%。前年から27.3ポイントの増加となりました。

*常用雇用者が100人以上の企業が対象。全国6,017企業を抽出、2,223社から回答。有効回答率44.6%

また東京都による『テレワーク実施率調査結果』によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は、2022年2月時点で62.7%。1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月以来、50~60%程度で推移しています。

オフィス削減…それでも徐々に通勤客は増加

コロナ禍の2年間、感染症の流行の度合いは変わりながらも、特に事業所が多く、感染者の多い東京では、高い水準でテレワークは継続されています。

そこでよく耳にするようになったのが「もうオフィスは必要ない」というオフィス不要論。実際、IT大手の富士通は国内グループの社員の勤務形態を基本的にテレワークとし、国内の既存オフィスの床面積を3年で50%削減するとしました。

最も大きな目標は経費削減にあるというものの、同様のニュースは他にもさまざま聞かれ、実際にオフィスの空室率は上昇傾向にある、という報道も。

一方で、オミクロン株が拡大するなか、それでも日常を取り戻しつつある昨今、以前のように満員の通勤電車が復活しつつあります。コロナ禍、通勤客減に対応してダイヤ改正で運行本数を減らしたという事情もありますが、久々に満員電車の圧迫感を味わいへとへとの会社員が急増しています。

すでに多くの人が出社せずとも仕事はできることを体験したはず。オフィスは不要と多くの人が考えたはず。それなのに、なぜ多くの人が再び出勤を始めたのでしょうか。

テレワーク導入で企業は「経営改善」「生産性向上」「人材確保」「事業継続性の確保」「経費削減」など、就業者は「ライフ・ワーク・バランスの向上」「(育児・介護中の)仕事の継続」「(通勤時間削減による)時間有効活用」「多様な働き方の確保」など、プラス効果を期待しました。

そして実際にテレワークを実施してどうだったのかといえば、もちろん期待したメリットをそのまま享受できたものもあれば、期待通りにはいかなかったこともあったでしょう。

WEBメディア「テレワーク・リモートワーク総合研究所」が発表した『テレワークのメリットとデメリット 2021年度版』(n=1,035)によると、テレワークのメリットとして最も多くあげられたのが、「通勤のストレスがなくなった」(女性72.4%、男性65.3%)。ほか「プライベート時間が充実した」、「人間関係のストレスがなくなった」などが多くあげられました。

一方デメリットとして最も多かったのが、「仕事とプライベートの区別ができない」。ほか「上司、同僚とのコミュニケーションが取りづらい、減った」「社内の情報、ノウハウ共有の共有が難しい、少なくなった」などが多くあげられました。

このように、実際にリモートワークを実施したところ、期待通りのメリットを得られる一方で、日々の業務のなかで「対面でないと」というシーンを再認識。リモートワークの限界も見えてきました。また必ずしもリモートワークで生産性があがったとはいえない状況も垣間見ることができます。

もちろん、急に導入が決まったテレワークに、機器や制度など、環境整備が追い付いていなかったことも大きいでしょう。ただ完全にテレワークに移行することが難しいことは明らか。これからも大手企業を中心にオフィスの規模適正化の動きはありつつも、オフィス不要、とまではならないといえそうです。