後継ぎ社長vs.古参社員、バトル勃発!社長の四十九日が修羅場に

目次1 寝耳に水の後継ぎの入社…従業員との間に生まれた溝2 【解説】後継者と古参従業員の争いを回避するために 経営者の相 … 続きを読む 後継ぎ社長vs.古参社員、バトル勃発!社長の四十九日が修羅場に


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経営者の相続対策は、事業をいかにして次世代に承継するかに加えて、個人の財産を相続させることも考える必要があります。しかし相続・事業承継に関係する人は多くなる傾向にあり、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。今回は後継者と古参従業員との軋轢にまつわる問題についてみていきます。
※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。

寝耳に水の後継ぎの入社…従業員との間に生まれた溝

【登場人物】
Aさん:60代。社員30名ほどの建設会社を経営
Bさん:Aさんの息子

 

それは、社長だったAさんの四十九日の法事で起きました。

 

「新参者のお前が、何を言っているんだ!」

 

一触即発。突っかかった相手の襟元をつかむ手を、大勢の大人たちが制します。突っかかれた相手は、Aさんの急逝をうけ、新しく社長となったAさんの息子であるBさん。突っかかった相手は、創業以来、Aさんを支えてきた古参社員でした。

 

さかのぼること半年前。Aさんの会社に入社してきたのは、30代の男性。入社と同時に、専務というポジションが与えられました。それがBさんだったのです。

 

Aさんが独立したのは20代のころ。当時はひとりで仕事をまわしていましたが、徐々に仕事が増えていき、はじめて従業員を雇ったのは、さかのぼること20年前のこと。会社の拡大期とはいえ、資金繰りが楽だった、というわけではなく、Aさんとその従業員たちは、まさに汗水たらして働いたといいます。

 

徐々に会社も安定、大きくなっていきましたが、はじめて仲間となった5名ほどの社員は、今なお、会社にはなくてはならない存在でした。

 

一方、Bさんにとって、父であるAさんは、なかなか家に帰ってくることのない人、という存在。父らしいことをしてもらった記憶はほとんどなく、仕事で忙しい父に代わり、母が文字通り父の代わりもしてBさんを育ててくれました。

 

Aさんは、たまに従業員を家に呼ぶことはありましたが、そのような場を嫌ったBさんは決して自分の部屋からは出ることはなかったといいます。そのため、古参社員とBさんの間に面識はありませんでした。

 

そして時は流れ、Bさんの入社シーン。

 

「初めまして。今日からこの会社の専務となるBです」

 

突然の御曹司の登場に、従業員同士、騒然とします。そして次の言葉が、従業員たちの反感を買うことになります。

 

「わたしはアメリカの大学でMBAを取得しています。そんなわたしから言わせてもらうと、この会社の体質は古すぎる。改革を進めていこうと考えています」

 

従業員は、みなポカーンとした様子。そして「何を言っているんだ、この外国かぶれが!」と誰もが沸々と怒りがわいてきたといいます。Aさんに「どういうことですか!」と詰め寄る古くからの社員もいました。しかしAさんは「まあ、まあ、あいつもまだ若いし、教育してやってよ」となだめるだけ。Bさんと従業員との溝は少しも埋まらないまま、突然のAさんの死。そして冒頭の四十九日のシーンになったわけです。

 

Aさんの急逝後、実質、会社を動かしてきたのは、古くからの社員たちでした。社長の突然の死という、会社始まって以来の危機に対し、社員は一丸となって乗り切ったのです。落ち着きを取り戻しつつあったAさんの四十九日。本来であれば、労いの言葉くらいあってもよかったのですが……。

 

「そろそろ落ち着いてきたので、会社を整理していきます。まず部署を3つに分けて効率的に……」

 

突然始まったBさんの言葉に、誰もついてきません。あの時みたいに、みなポカーンとしています。それを察したのか、Bさんはつい、言ってしまったのです。

 

「私が何を言っているか、分からないようですね。やはりわたしはアメリカの大学を出ていますが、みなさんはよくて高卒ですから、仕方がないでしょう」

 

そして冒頭のシーン。この一件で、古参社員は全員退職。ほかの多くの社員も会社を去り、自然崩壊していったといいます。

【解説】後継者と古参従業員の争いを回避するために

事業承継においては、新社長と古参社員との間の軋轢はなかなか避けて通れない問題のようです。これは、親族内承継であろうと、外部から後継者を迎える場合でも変わりはなかろうかと思います。

 

今回の事例のように、古参の社員が前社長と共に会社を発展させてきたという自負がある場合に、とくに新社長のやり方についていけないということが起こり得ます。これは、新社長が良い悪いの問題ではなく、そういうものだと割り切るしかない部分があると思います。

 

ただ、割り切るしかないとしてもこの事例のように会社が崩壊してしまっては困ります。

 

そこで、古参社員への対応ということだけでなく、事業承継の進め方として、前社長が新社長への事業承継を早い段階から長期的視点で始める、後継者となる者(特に子供など親族の者)については、最初から重要なポジションを与えるのではなく、社内のほぼすべての業務を経験させる、社長と後継者との間でなどの手段をとることが事業承継を円滑に進めていくうえで有効かと思います。

 

事業承継については、早いうちに進めておくことをおすすめします。今回の事例のように半年程度の時間しかないと、社長の考えていることや後継者の考えていることをじっくり打ち合わせることもできず、また社内への周知も不完全なままでの承継となり、最悪この事例のように会社が崩壊となってしまうことも。事業承継をするのはまだ早いと思っているとあっという間に時間は過ぎていってしまいます。社長と後継者の二人三脚で事業承継をすすめられるうちにはじめましょう。

 

◆話を伺ったのは…

加陽 麻里布さん

永田町司法書士事務所 代表司法書士
司法書士合格後、司法書士事務所で実務経験を積み、2018年に独立。永田町司法書士事務所を設立する。業界“ファーストクラス”を基本理念に、依頼者のビジネスと日常を有利にするために日々邁進中。執筆活動にも積極的で、媒体を問わず精力的に活動している。

永田町司法書士事務所 https://asanagi.co.jp/