社長の座を譲って…先妻の子を会社から追い出す、継母の鬼畜

目次1 創業者急逝で専務(先妻の子)が社長に就任2 【解説】議決権の過半数を握ることの重要性 経営者の相続対策は、事業を … 続きを読む 社長の座を譲って…先妻の子を会社から追い出す、継母の鬼畜


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経営者の相続対策は、事業をいかにして次世代に承継するかに加えて、個人の財産を相続させることも考える必要があります。しかし相続・事業承継に関係する人は多くなる傾向にあり、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。今回は会社の議決権に関する問題についてみていきます。
※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。

創業者急逝で専務(先妻の子)が社長に就任

【登場人物】
Aさん:70代。地元の有力企業社長
Kさん:Aさんの前妻との子ども
Nさん:Aさんの後妻との子ども
W子さん:Aさんの後妻

 

創業一代で地元の有力企業にまで成長させたAさん。猛烈な営業で地元に人脈を構築し、ワンマン経営でここまでのぼりつめたといいます。

 

そんなAさんも70代後半。この10年あまりは、事業承継を見据え、着々と準備を進めてきました。Aさんが後継ぎと考えているのは、Kさん。前妻との間に生まれた子どもで、とにかく実直な性格。少々融通の利かないところはありますが、その分、間違いのない判断をするので、安心して後を任せられると考えていました。

 

「真面目すぎて面白みに欠けるかもしれないが、堅実な性格で、間違いはない。安心してわたしの次を任せることができる」

 

ただAさんは、Kさんが次期社長だとは、周囲に言葉にすることはなかったそうです。その代わり、KさんをAさんの右腕となる専務に据え、そのことで社内にも知らしめていると考えていたのです。

 

一方、Aさんには後妻の間にも子どもがいました。Kさんとは10歳ほど年が離れたNさんです。現在はAさんの会社で部長として活躍しています。

 

NさんはKさんとはいい意味で真逆の性格。自由奔放ですが、ほかにはない発想で、新事業を立ち上げ、軌道にのせた実績があります。

 

「Nは、ほかとは違う発想で、面白いことを考える。会社を大きくすることを考えると、Nのような存在は貴重だ」

 

Kさんを社長として実直に経営し、Nさんが新しい発想で会社を大きくしていく……いいバランスを保つことができれば、さらに会社は成長していくだろう。そんな期待を寄せていたといいます。

 

しかし社長の承継は突然訪れました。Aさんが急逝したのです。社内は騒然としましたが、ある程度株式の譲渡が進んでいたKさんが、ひとまずはトップに就任しました。

 

「突然のことでみなさんも驚かれたと思いますが、全力で会社を引っ張っていきます」

 

実直なKさんの言葉で、バタバタしていた社内も平穏を取り戻しました。しかしここで暗躍したのが、後妻のW子さん。Kさんとの仲は悪くはありませんでしたが、よくもありませんでした。というのも、再婚したのはKさんが高校生のとき。しばらくするとKさんは大学進学で家を出ていきましたから、親子らしいことをしたことがほとんどなく、絆を深める機会もなかったというのです。

 

そのような関係もあり、Kさんに対して、特に思い入れはなく、「我が子を次の社長にしたい……」という思いをずっと抱き続けてきたのかもしれません。

 

それからしばらくたち、W子さんはKさんに言います。

 

「Kさん、Nに社長の席を譲ってくれる?」

 

実はKさん、株を譲り受けてはいましたが、経営権を握るには不十分なものだったのです。そこでW子さんは暗躍し、残った株を少しずつNさんに集約させていました。

 

「なんでそんなことを……」

 

継母とはいえ、なぜそんなことをするのか、理解できない様子のKさん。それに対してW子さんは「真面目すぎるKさんでは、この会社はどん詰まり。大きくしていくためには、Nに任せたほうがいいのよ」と言い放ちます。確かに、株を手放した人たちは、Nさんの可能性のほうを信じたわけです。その事実を知ったKさん。会社を去る以外、道はなかったといいます。

【解説】議決権の過半数を握ることの重要性

今回の事例のように、社長の急逝により実の子同士で事業承継をめぐり骨肉の争いになってしまう……というのはテレビの中や小説の中だけでなく実際にありそうな話です。

 

では、事業承継で骨肉の争いにならないようにするためにはどのように事業承継をすすめていくのがよいのでしょうか。

 

事業承継については、経営者の方おひとりおひとりにいろいろな考え方があるでしょうから、どの方法が正解であると断言することはできませんが、今回の事例では、まず急逝した社長がKさんに経営権を握れるだけの株式を渡していなかったこと、この一点が骨肉の争いを生んだ最も大きな原因だったと思われます。

 

株主総会が唯一取締役を選任・解任することができる機関ですが、取締役を解任するためには、「株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。(会社法309条1項)」という要件を満たす必要があります。

 

裏を返せば、議決権の過半数の株式を握ってさえいれば取締役を解任される心配はないということなのです。

 

この点に関してAさんはKさんに対して解任されないだけの株式を譲渡していなかった。そのため、後妻によって、残っている株式を集められKさんは会社を去らざるをえなくなってしまった。仮に経営権を握れるだけの株式=議決権の過半数にあたる株式をKさんが持っていた場合、後妻がいくら株式を集めてもKさんを解任することは不可能です。

 

このように兄弟間あるいはその周りの親族の思惑で事業承継の争いが起こらないようにするために効果的と思われるのは、社長が後継者と決めた人物に対して潔く大半の株式を渡してしまうことです。兄弟仲良く半々に、といって分けるのは、後々後継者争いを招く遠因ともなりかねません。

 

◆話を伺ったのは…

加陽 麻里布さん

永田町司法書士事務所 代表司法書士
司法書士合格後、司法書士事務所で実務経験を積み、2018年に独立。永田町司法書士事務所を設立する。業界“ファーストクラス”を基本理念に、依頼者のビジネスと日常を有利にするために日々邁進中。執筆活動にも積極的で、媒体を問わず精力的に活動している。

永田町司法書士事務所 https://asanagi.co.jp/